むし歯治療
むし歯治療
口の中の細菌数は10兆個以上といわれ、そのうち、むし歯の原因となる酸を作る酸産生菌が70~80%を占めると考えられています。酸を作る代表的な細菌がミュータンス菌です。ミュータンス菌は飲食物の糖分を摂取・分解して酸を作り出します。この酸によって歯が溶かされますが、人の唾液には酸を中性に近づける働きがあり、また、カルシウムやリン酸を含み、これらの作用で溶かされた歯は修復されています。
しかし、糖分の摂取が頻繁であったり、歯みがきの状態が悪かったりすると、酸の緩衝や修復が追いつかず、歯が溶けた状態が続くことになります。その部分は放置すると崩壊し、むし歯となります。
ミュータンス菌と同様に、強い酸を作り出すのがラクトバチラス菌です。ラクトバチラス菌は、エナメル質のようなツルツルした部分には生息できず、ミュータンス菌によって作られたむし歯のザラザラした部分や、奥歯の溝、詰め物や被せ物の適合が悪いすき間などに生息します。酸素の有無に関係なく生存できるため、酸素の少ない深いむし歯の中で酸を作り、さらに深部へとむし歯を拡大させていきます。
初期段階のむし歯は自覚症状が現れず、日常的なケアを怠ると悪化し、やがて痛みを伴うようになることがありますが、患者様によってむし歯の進みやすさは違います。年齢やむし歯の場所などにより経過観察を含めた治療法を決めることが大切です。治療が必要な場合でも早い段階であれば、比較的簡単な処置で治ります。むし歯の兆候があればお早めに受診してください。
むし歯は、次のような条件が揃った場合になりやすいと考えられています。
歯質は一人ひとり異なり、むし歯のなりやすさを左右します。歯質を強化するためには、歯の再石灰化を促すフッ化物(フッ素)を利用したり、だ液の分泌を促進するためによく噛んだりすることが効果的です。歯が重なりあった歯並びや上下の歯が逆の噛み合わせなどもむし歯が起こりやすくなるので、お口の状態にあった歯みがきを行えるように、当院では専門の歯科衛生士による歯磨きのご相談を行っています。
糖分の多い間食が増えると、口の中が酸性になり、むし歯になりやすい状態になります。間食を控えたり、糖分の少ないおやつを選んだり、バランスのとれた食生活を送ることが大切です。
キシリトールやフッ化物(フッ素)には、むし歯の原因となる細菌の活動を抑える働きがあります。キシリトール配合ガムを噛む、フッ素入り歯みがき粉を使う、といったことを日常で意識するとともに、歯科での定期的なクリーニングで、歯垢や歯石を除去することが効果的です。
口の中で酸が作られるまでには、少し時間がかかります。むし歯予防には、糖分を摂取したら早めにうがいや歯みがきをして、むし歯の原因となる酸を取り除くことが効果的です。
歯の痛み方でむし歯の進行をある程度知ることができます。その進行具合によって治療方法が異なります。
COごく初期のむし歯
COは「シーオー」と読み、「C」はcaries(カリエス:むし歯)の頭文字で、「O」はobservation(オブザベーション:観察)の頭文字です。したがって「CO」は、むし歯になっているものの、今のところ治療の必要がない要観察歯となります。
むし歯菌が放出する酸によってエナメル質が溶かされ始めている段階で、歯の表面が白く濁って見えますが、まだ穴は空いておらず、痛みなどの自覚症状もありません。
適切なブラッシングやフッ素塗布により、歯の再石灰化を促すことで治癒を促します。
C1エナメル質に小さな穴が空いたむし歯
エナメル質がさらに溶かされ、小さな穴が空いた状態です。歯の表面は黒ずんで見えます。冷たいものを飲食した際にしみることもありますが軽度で、ご自身でむし歯かどうかの判断がつきにくい状態です。
この段階では、患者様のむし歯の進みやすさや年齢、部位などにより経過観察を行うか治療を行うかをご相談します。治療をする場合でも、削る量はわずかで、麻酔を使わなくても痛みはありません。
治療を行う場合は、むし歯の部分を最小限に削り、レジン充填と呼ばれる白い歯科用プラスチックを詰め、表面をなめらかに整えます。
C2歯の内部(象牙質)まで進行したむし歯
むし歯がエナメル質の内側にある象牙質まで達している状態です。むし歯の部分は黒く見えます。冷たいものや甘いものを飲食したときに、しみる・痛むなどの自覚症状が現れます。この段階から進行が早くなるため早期の治療が必要になります。
むし歯の部分を削り取り、詰め物で補います。症状によっては局所麻酔を使用します。むし歯が広範囲な場合は、型を取って作製するインレー(詰め物)や被せ物によって歯の機能を回復します。
*詰め物・被せ物などの修復物の材料には様々な種類があり、保険範囲のものと保険外のものがあります。当院では身体に優しく、審美性の高い材料を種類豊富にご用意しています。
C3神経まで進行したむし歯
むし歯が歯の内部にある神経(歯髄)まで進行した状態です。冷たいもの、甘いものに加え、熱いものでもしみたり、刺激を与えなくても激しい痛みが生じたりする場合があります。
むし歯の部分と痛んでいる神経を取り、神経が入っていた歯の内部(根管)を消毒する根管治療を行います。この段階で治療すれば、歯自体は残せることがほとんどです。根管治療後は歯を土台で補強し、クラウンを被せます。歯質がたくさん残っている場合や歯の部位、嚙み合わせによりレジン充填やインレーを詰めることもあります。
C4歯根まで進行したむし歯
歯根の部分までむし歯菌が侵入し、歯の大部分は溶けてなくなり、末期のむし歯の状態です。この段階では痛みを感じる神経自体が壊死しているため痛みを感じません。しかし放置するとやがて歯根部に膿がたまり激痛や腫れを生じることがあります。
残せる場合は、C3と同じように根管治療を行った後に、土台で補強し、クラウンを被せます。残っている歯質が少なかったり、歯根が短くなっている場合は、レジン充填や金属の蓋(コーピング)を被せ、その上に入れ歯を装着することがあります。残せない場合は抜歯が必要となります。抜歯後は、ブリッジや入れ歯、インプラントなどで歯の機能や審美性の回復を図ります。
ブリッジは、失ってしまった部分の歯を補うために、その両隣の歯を土台にして、連続した被せ物を装着する治療です。ご自分の歯と同じように噛むことができますが、ブリッジを固定するため両隣の歯を削る必要があり、両隣の歯の負担も入れ歯やインプラントより大きくなります。このブリッジには、保険適用の金属製のものや適用外のセラミック製など、様々なものがあります。
比較的短期間での作製が可能で、保険のものはブリッジやインプラントに比べ安価です。硬い食べものや、粘り気のある食べ物では、噛みづらく感じることがあります。また人口の歯茎があるため違和感があり、慣れるまで調整が必要で時間がかかります。残っている歯に針金をかけるため、ブリッジほどではありませんが、その歯の負担になり審美性も悪くなります。自費治療だと金属性の薄くて丈夫な入れ歯や針金のない入れ歯があります。
骨に人口の歯根を埋め込む方法で、ご自分の歯と同じように噛むことができ、違和感がなく審美性にも優れています。ブリッジのように歯を削ることはなく、入れ歯のように針金をかけることもないので、残っている歯に負担はありません。インプラントはむし歯にはなりませんが、歯周病にはなります。お口の中で長く維持させるためには、ご自身の歯と同じように毎日の歯みがきと定期検診が重要です。また保険外治療となるため費用が高く、骨に埋め込む外科手術が必要となるため内科疾患や重度の歯周病がある方は適応外になることがあります。